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【今回は本気】2025.4.16の薬機法附帯決議、なぜここまで“具体的”なのか?

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【今回は本気】薬機法附帯決議、なぜここまで“具体的”なのか?
〜過去との違いは「実行前提」なところにある〜

2024年の薬機法改正に対して出された附帯決議は、これまでと何が違うのか?──実は今回、国会は本気です。

後発医薬品の再編にはKPIと期限、条件付き承認には取消基準、そして零売・RWD・薬剤師のキャリア形成にまで具体的な指示がズラリ。

従来の“お願いベース”から、“実行前提の仕様書”へと進化した決議の中身をわかりやすく解説します。

 

2024年に可決された薬機法改正案(第217回国会)に対し、国会が出した附帯決議。

「またお願いレベルの話でしょ?」と思った方──今回は違います。

なんといっても、期限付き・指標付き・関係者ごとの役割明示と、かつてないレベルで「やる前提」「変える前提」の決議内容になっているんです。

従来の附帯決議ってどうだったの?

これまでの附帯決議は、こういった表現が主流でした:

  • 「配慮することが望ましい」
  • 「検討を進めること」
  • 「必要に応じて対応すること」

はっきり言えば、ふわっとしていたんです。

法律の趣旨を補う補足書という性質上、努力目標の列挙で終わるケースが多くありました。

今回の決議は「やる前提」「動かす前提」

今回の附帯決議は、あらゆる面で具体的です。代表的なものをご紹介します。

● 後発医薬品の再編(期限&KPI付き)

  • 令和8年度中にKPI(重要業績評価指標)を設定
  • 令和12年度末までに業界再編を加速

「自主努力を見守る」ではなく、期限内に数値目標で改革する前提です。

● 条件付き承認制度(取消ルール明記)

  • 検証的臨床試験の提出期限を具体化
  • 未達成なら承認取消し

“承認したまま放置”を許さない明確なルールです。

● 零売とOTC化の整合性

  • 「やむを得ない場合」の範囲を明確化
  • 過去から零売を担ってきた薬局には過度な指導を避けるよう要請

制度設計レベルの要求がなされており、現場にも配慮した記述です。

さらに注目すべき「補足項目」も本気

◆ リフィル処方:実態調査+普及活動

  • 実態調査でなぜ使われないか把握
  • 医療費削減のメリットを広報

◆ RWD(リアルワールドデータ)への慎重姿勢

  • 臨床試験の代替ではないと再確認
  • 使用には品質と基準の整備が必要

 

ここから先、RWDとRCTの用語の解説 ご存じの方は飛ばしてください

リアルワールドデータ(Real World Data)とは、
医療現場や日常生活の中で実際に得られるデータのことです。

リアルワールドデータ(Real World Data)とは

データの種類具体例
電子カルテ診察記録、検査値、処方内容など
健康保険レセプト投薬履歴、診療行為の明細
DPCデータ急性期病院における入院情報
ウェアラブルデバイス心拍数、活動量、睡眠時間など
アンケート・患者報告QOL調査や副作用自己申告

〜附帯決議で再確認された「証拠の質」〜

薬機法の附帯決議(2024年)では、リアルワールドデータ(RWD)の活用に触れつつ、
「最も信頼性の高い方法は比較臨床試験(RCT)である」という一文が明記されました。

これは、RWDの活用が進む一方で、承認の根拠として何が最重要かをあらためて確認した非常に重要な記述です。

そもそもRCTとは?

RCT(Randomized Controlled Trial/ランダム化比較試験)とは、
被験者をランダムに割り付けて、新薬と比較対照(プラセボまたは既存薬)の効果を比較する臨床試験の方法です。

【RCTの基本構造】

手順内容
スクリーニング対象となる被験者の選定
ランダム割付被験者を無作為に2群以上に分ける(例:新薬群/対照群)
盲検化(ブラインド)被験者や研究者がどちらの群か分からないようにする
比較評価有効性・副作用などを統計的に比較

なぜRCTが「最も信頼できる」のか?

RCTが高く評価される理由は、主に以下の3点にあります:

1. バイアス(偏り)を最小化できる

→ ランダムに割り付けることで、年齢・病歴などの影響を平均化
→ 「薬が効いたのか、他の要因か」がはっきりする

2. 因果関係を証明しやすい

→ 「この薬を使ったから、この効果が出た」と論理的に言いやすい

3. 統計学的に有意性を判断できる

→ 「たまたまじゃないか?」を数値で否定できる(P値や信頼区間で評価)

附帯決議が強調したポイント

〜「承認の証拠はRCTが原則」〜

薬機法の附帯決議では、以下のように明記されています:

「薬事承認申請に際して添付する資料としては、原則として臨床試験の試験成績に関する資料であることに変わりはないことを改めて確認すること」

この文言の背景には、

  • RWDのような補助的データが広まりつつある今、

  • 「本当に効くか、安全か」の判断は依然としてRCTが中心であるという原則を守る必要がある

という危機感があります。


RCTの限界や課題は?

もちろん、RCTにも弱点があります:

課題内容
費用が高い数億〜数十億円かかることも
時間がかかる数年単位の準備と実施が必要
対象が限定的高齢者や基礎疾患を持つ人が除外されることが多い
実臨床と乖離する実際の現場ではもっと多様な患者が対象になる

→ これを補う形で、RWDの活用が注目されているわけです。


「RCT+RWD」が今後の主流に?

附帯決議のスタンスは、

  • RCTを中心にしつつ、

  • RWDで補完する
    というハイブリッド型の審査体制を念頭に置いたものと考えられます。

たとえば:

  • RCTで「有効性の証拠」を得る

  • RWDで「副作用」「実臨床での使われ方」を追う

というように、役割分担して安全性と実用性の両立を図ることが重要になります。

薬剤師としての関わり方は?

  • 薬歴や副作用モニタリングが、RWDの一部となる時代が来る

  • 一方で、新薬の承認根拠がRCTに基づいているかどうかを読み解くリテラシーも求められる

  • 添付文書や製品情報概要を読み解き、患者に「証拠レベル」を伝える力が今後ますます重要に

◆ 添付文書での情報開示

条件付き承認であることを明記することで、医療者・患者への情報共有を強化します。

◆ 副作用救済制度の拡大

現行制度の穴を認識し、抗がん剤など未救済領域への拡大検討が明記されました。

◆ 緊急避妊薬のOTC化と若者参画

政策決定に若者や当事者の声を直接反映させる方針です。

薬剤師にとっても“無関係”ではない

今回の附帯決議で言及された以下の点は、薬局・薬剤師の未来にも直結します:

  • 零売の制度整理=販売の可否に関わる
  • 診療報酬見直し=薬局の機能評価に直結
  • 薬剤師のキャリア形成・教育・処遇の在り方

制度が変わってから動くのでは遅い──今回は「前もって動くべき」決議です。

まとめ:これは“お願い”ではなく“仕様書”だ

2024年の附帯決議は、過去の決議と比較しても:

  • KPI・期限・責任主体の明示
  • 「検討してね」から「やってね」に明確シフト
  • 実行前提の設計図・ロードマップ的性格

これからの薬局経営、薬剤師の働き方を見据える上で、今回の附帯決議は「静かなる分岐点」になるかもしれません。