Amazonが薬局進出するというニュースが2020年11月に報道され、日本の薬局業界はかなりざわつきました。
なにしろ、あのAmazonが本気になったら日本の薬局の需要も取られてしまうのではないか。
通販において、日本の小売業のシェアを奪いつつあるAmazonだし、本屋さんはほぼ駆逐されてしまいました。
Amazon、成長力はまさにアメリカそのもの・・・
でも、今回は、Amazon薬局の存在はそれ程脅威ではないというお話です。
Amazon薬局が失敗する理由
- アメリカの処方薬で、ネット通販比率は、10%にも満たない。
- Amazon薬局は、届くのに2日程度かかる。
- 安くない。
- コントロールドドラッグ(一部の規制薬物)は販売できない。
意外なことに、アメリカでも、処方箋薬のネット通販のシェアは少ないのです。
Amazonは、消費者から支持されて、業績を拡大し続けてきた企業であることは言うまでもありません。
そして消費者が通常のネット通販でAmazonを選ぶためには
- 安い
- すぐ届く
これが必須です。
日本でもアメリカでも同じだと思います。
しかしAmazon薬局は、この2つの価値を提供できていません。
Amazon薬局は、安くもなく、早くもない。
安くもなく、すぐ届かないアマゾンは本国アメリカでも、処方箋の価格競争に勝てる見込みはないといわれています。
なぜAmazon薬局は、アメリカでも価格競争に勝てないのか。
それは、次に説明する、【グッドアールエックス】の存在を知れば、処方箋薬のネット通販は難しいことが分かります。
アメリカの処方箋受付アプリ グッドアールエックス
グッドアールエックスのCM
https://www.youtube.com/watch?v=9qkXs768JKY
病院帰りにグッドアールエックスアプリを起動すると、帰り道までにどこの薬局が一番安いか検索できます。
そしてクーポンも出ます。
アメリカでは処方箋の価格競争は当たり前。
価格競争では、規模の大きいAmazonが有利と考えられますが、実際は違います。
アメリカでは薬局でもいわば特売のようなものがあります。
いつも”やや安いAmazon薬局”よりも、その日だけ爆安の薬局というものも存在します。
それを、病院から自宅までの帰り道で探せるアプリが大人気です。
そのアプリが、グッドアールエックス
グッドアールエックスと、特売をやる薬局の存在で、Amazonの
- 安い
というはメリットは完全否定されます。
しかも、配送が早いという通販でのメリットもここでは生かせません。
Amazonの薬局進出で既存の薬局は危ういと思われたが、冷静に考えると間違い
VS
アメリカにおいて、Amazonの薬局進出が既存の薬局の脅威とならないということを示したものがこちらです。
先ほどのグッドアールエックスの株価です。
これは、Amazonにシェアを取られることが考えられた、薬局価格比較アプリ【グッドアールエックス】の株価の推移です。
Amazonの薬局進出の発表があった際に、一時急落しました。(赤矢印)
皆、Amazonが既存薬局に脅威を覚えたことでしょう。
しかし、冷静になって分析すると、Amazon薬局は脅威でも何でもないことが分かります。
株価は急激に回復しました。(青矢印)
Amazon薬局が、いかに本国でも苦戦を強いられるかが分かると思います。
- 処方箋におけるネット販売の比率は10%も満たない。
- Amazon薬局は、すぐに届けることはできない。
- 価格競争においても、グッドアールエックスが最安価格の薬局を案内するためAmazonは不利
- 一部の規制薬品は販売できない。
アメリカにおいても、Amazon薬局の勝算は薄いといえます。
日本におけるオンライン薬局は、様々な規制が入ることが想定される
Amazon薬局は、本国アメリカでも苦戦を強いられます。
そのうえで、日本に進出した場合はどうなるでしょうか。
ここからは推測の域ですが、
- 規制薬物は販売できない:向精神薬や麻薬などは規制される可能性が高い
- 価格競争ができない
- アメリカでも2日もかかるため、即日配送もできないことが考えられる
などなど、様々な課題に阻まれることは容易に想像できます。
Amazon薬局は当面先だが、需要があることは確か。既存薬局は両立しうる価値を考える時期
Amazon薬局のようなサービスにより、日本の薬局が駆逐されてしまうような事態はしばらくは起こりそうにないことはお判りいただけたと思います。
しかしながら、薬局に行かなくても薬が届くというメリットは患者さんの立場に立って考えれば需要があるのは明らかです。
- オンライン服薬指導
- 薬局における薬の配達サービス
(ローソンではOTCをウーバーイーツで届けるサービスを開始していることもヒントだと思います)
このような仕組みを、地域包括ケアシステムの中に位置づけて進めていくことなどが今後の患者本位の薬局として求められることだと思います。
ここからはついでに・・・
いち薬局薬剤師にすぎない私が、視野を広げるきっかけ。米国株投資
薬剤師として仕事をしていると、薬物の作用機序や、医薬分業の問題点など偏った?テーマに縛られた思考になってしまいます。
もちろん、薬剤師としての研鑽は必須としても、広く視野を広げる脳トレとして、米国株投資を通じて世界情勢にも興味を持つことも良いのかなと思います。
今回の記事も、Amazon薬局進出により、グッドアールエックスの株価が一旦暴落
その後、グッドアールエックスの株価が復活したことに端を発して調べ始めたことから着想を得ました。
日本で急成長したドラッグストアもアメリカ発端のビジネスモデルです。
そして意外かもしれませんがアメリカ株は、思ったよりも小額から購入することができます。
(1株から普通に買えます。)
あのアップルですら、1万4千円程度で1株購入できます。(2021年2月現在)
おなじみ、ファイザーは3900円程度。
そして、日本株と比較すると、米国株は常に上がり続けているので、上がっている株を買えばそのまま上がりやすいです。
少しの自己投資で、調剤室から世界を見渡せる視野を広げることができるので、お勧めです。
注 投資は自己責任でお願いします。(お決まりなので記載しておきましょう。)
追記:この記事は2021年2月に書きましたが、時々見られているようなので追記しますと・・・
グッドアールエックスは、コロナバブル時でのIPOだったため、その後の米国のインフレや金利上昇下においては、その高バリュエーションは維持できず株価はかなり下がっています。
これを見て株を買う人はまずいないと思いますが、グッドアールエックス(GDRX)は以前より安くなっていても当分買いではないと思います。
にしても、Amazonは、本国で今一つだったから日本へ進出したのでしょうか。
2022年現在の、医薬品供給制限の混乱の中では既存の薬局も含めですがキビシイ状況になりそうです。
日本も先手を打って、一包化調剤を対人業務に無理やり変更するなどAmazon薬局対策をしているようですが、オンライン服薬指導なども急ピッチですすめていきたいところです。
うまくいくかどうかは別として、Amazonが薬剤師求人増やし始めた、どれぐらいの報酬を提示してくるのか楽しみでもあります。
2023年2月 Amazon pharmacyの現状
今はやりのChatGPT先生に聞いてみました!
Amazon pharmacyの事業はアメリカで成功していますか?
Amazon Pharmacyはアメリカでのサービス開始が2020年と新しいサービスであり、それに伴い成功しているかどうかは確定的なデータがありません。
しかし、Amazonは常に顧客のニーズに応えることを重視しており、Amazon Pharmacyも顧客が簡単かつ安全に薬品を入手できるようになることを目指しています。
このサービスが成功するかどうかは将来的に判断することができます。
Amazon Pharmacyはアメリカ合衆国内で新しいサービスとして導入されたものですが、現在その成功については正確な情報が入手できません。
Amazonは一般的に非常に成功している企業です
しかし、Amazon Pharmacyも同様に、このサービスがアメリカ市場でどの程度の成功を収めているかについては、公式なデータが入手できない限り明確には答えられません。
Amazon Pharmacyのアメリカでのレビューは良いですか?
顧客の経験や意見は大きく異なる可能性があるため、米国の Amazon Pharmacy の一般的な評価を提供することは困難です。
一部の顧客は、このサービスが便利で使いやすく、処方薬を購入するための費用対効果の高い方法であると考える場合があります。
一方、一部の顧客は、サービスの質や利用可能な医薬品の範囲について懸念を抱いている可能性があります。
Amazon Pharmacy は比較的新しいサービスであり、サービスの進化と改善に伴い、カスタマー エクスペリエンスと評価が時間の経過とともに変化する可能性があることに注意してください。
Amazon Pharmacy の使用を検討している場合は、他のお客様からのレビューやフィードバックを読んで、サービスでの経験をよりよく理解することが役立つ場合があります。
米国の Amazon Pharmacy のレビューはまちまちで、肯定的な経験を示す顧客もいれば、懸念を抱く顧客もいます。
一部の顧客はサービスの利便性と使いやすさを高く評価していますが、他の顧客は薬の配達や特定の薬の入手可能性に問題を抱えている可能性があります。
個々の経験は異なる可能性があり、すべてのお客様が Amazon Pharmacy で同じ経験をするわけではないことに留意することが重要です。
サービスを使用する前に、さまざまな顧客からのさまざまなレビューを読んで、人々が経験した経験の種類をよりよく理解することが役立つ場合があります.
また、Amazon Pharmacy は比較的新しいサービスであり、サービスの進化と改善に伴い、顧客のレビューやエクスペリエンスが時間の経過とともに変化する可能性があることにも注意してください.
一部の顧客はサービスの利便性と使いやすさを高く評価していますが、他の顧客は薬の配達や特定の薬の入手可能性に問題を抱えている可能性があります。
Amazon Pharmacyは日本で展開するようですが知っていますか?
2021年の私の知識のカットオフの時点で、Amazon Pharmacyは日本では利用できません。
将来的に日本にサービスを拡大する計画についての情報はありません。
Amazon は急速に進化している企業であり、将来的に新しい市場に参入したり、新しいサービスを開始したりする可能性があることに注意してください。
日本で Amazon Pharmacy を使用することに興味がある場合は、Amazon の Web サイトまたはカスタマー サービスで、お住まいの地域でのサービスの利用可能性に関する最新情報を確認することをお勧めします。
以上です。
日本でのAmazon薬局の現状は日経新聞などでチェックすることも必要です。
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2024年3月追記
何気なく書き始めた記事ですが、何気に見られているみたいなので申し訳ない・・・
最近の状況を追記します。
2023年12月期のAmazon決算発表の後、アマゾンファーマシーの立ち位置がどの程度のものか気になり、アマゾンのカンファレンスコールを調べてみました。
そのなかで、AmazonPharmacyに関するこのような記述がありました。
– 以前の医療システムでは、プライマリーケアの予約や訪問には数週間かかり、車で医者の待合室に到着するまでの時間や待ち時間が長く、薬局にも別途行く必要があった。
– しかし、新しい医療サービスでは、アプリを通じて全ての医療データが簡単にアクセスでき、開業医とのチャットやビデオ通話が可能。
– 大都市には実店舗があり、即日受診が可能であり、専門医の診察も1〜2日以内に受けられる。
– 医薬品が必要な場合は、Amazon Pharmacyや提携薬局を通じて1〜2日で配送される。
– 新しい医療サービスでは、従来の医療体験よりも優れたサービスを提供し、プライム会員向けには割引サービスも提供されている。
– このような体験を通じて、医療体験が変化し、顧客のニーズに合ったサービスが提供されることで、ウェルネスやダイエットなどの分野で顧客のサポートに重点が置かれている。
まあ、記述はほんのわずかですし、Amazonも実店舗の薬局をやり始めているみたいですし、正直AmazonにとってはAmazonPharmacyはそれほど重要じゃない感じがします。
本国でこんな調子なので、日本での本格展開はまだ先のように感じます。
(個人の感想です)