こんにちは。薬剤師&ケアマネ卵&ブロガーのゆるやく
です。
はじめに
薬局ヒヤリ・ハット分析事業には
様々な調剤過誤の事例が寄せられています。
事例ごとに過誤に至った原因が示されていますが、調剤の一連の
流れの中で【過誤を起こすポイント】があります。
今回はそんな、調剤過誤発生ポイントについてまとめてみました。
発生する場所ごとに対策が違いますので原因を明確にして
調剤過誤対策をしましょう。
間違った調剤過誤対策
複数の目でチェックをすればよい
と言われますが、少なくとも処方意図の解析や相互作用チェック以外では、
ダブルチェック等は、効果なし 時間の無駄
などと言われるものがありますが、本当でしょうか?
それまでに何人もの事務、薬剤師が見てスルーしていた調剤ミスです。
そんな調剤ミスを投薬時にしっかり確認して防げ!とか・・・
複数人による連帯無責任体制の結果、過誤製品が投薬まで流れてきてしまっているのです。
もちろん投薬時にしか防げない過誤も存在しますが、
ただ、【処方箋通り調剤する】
ができていない、
- レセコン入力ミス
- 別物ピッキング
- 数量違い
などのミスは、投薬時までには100%なくすことが前提です。
そのうえで、投薬時に診察時の医師の話の聞き取りと処方内容に違和感を感じて疑義照会を実施
→処方変更によるミス回避
という対人スキルを磨きましょう。
前置きが長くなりましたが、では見てみましょう。
調剤過誤発生場面:納品時
問屋さんから医薬品が納品された時から、過誤対策はスタートします。
似た包装の別の医薬品棚に補充してしまう
パッケージが似ていたりすると間違った場所に補充してしまう可能性がある。
薬局によってはハンディーターミナルでコードを読み込ませて補充するシステムもあるが、それを使用しないケース。
なれていると、油断して何気なく補充してしまう。
例
2mgセルシンと5mgセルシンは似ていて、補充を誤る
対策
- 補充モードの機器があれば使用する
- GS-1コードの下3~4桁を確認して補充する
伝票と異なったものが納品され、検品でスルーしてしまう
めったにないケースだが、以下のような場合に発生する。
薬局に在庫が無いものが処方され、取り寄せ医薬品が納品された際、間違いがないと思い込んで確認せず袋詰めしてしまう。
例
- アドエア100が必要なところ、その前に発注していたアドエア250が届いて、思い込みのまま袋詰めしてしまう
- アドエア100が必要なところ、問屋さんの納品ミスでアドエア250が届いてしまい、思い込みのまま袋詰め
対策
問屋さんの納品にもミスがある可能性などを知っておく。
調剤過誤発生場面:日々の業務
例
- 調剤した医薬品を、棚に戻す際に誤った場所へ戻す。
- 棚卸などで、慣れないスタッフが薬の出し入れをした際
誤った場所へ戻してしまう。
対策
- 繁忙時は、調剤で取った薬の箱は棚に戻さず、落ち着いてから戻す
(一時保管場所を使用する) - 棚卸のみで薬に触るスタッフがいる場合は、誤った場所へ戻した際のリスクを十分に説明し、ミスを防ぐ。
調剤過誤発生場面:処方箋受付時
ここでは、受付時以外でも気づくタイミングはあるが、受付で気づける
可能性のあるものを挙げる。
例
- 処方箋の期限切れを受付てしまう
- 複数枚綴りのうち1枚のみしか受け取らない
- 氏名を確認せず、病院にて別人の似た名前の人の処方箋が
交付されており、それをもとに調剤する
(苗字のみの確認や、保険証の未確認など) - コピーで偽造された処方箋の受付
- 処方期間を患者さんが勝手に書き足して延長した処方箋の受付
対策
- 保険証や聞き取りにて名前の確認
- 有効期限や、処方箋の印字に不具合が無いか確認(疑わしければみんなで確認)
- 処方延長が手書きの場合は、医師の押印を確認する(疑わしければみんなで確認)
- それでも疑わしければ即疑義照会を実施
調剤過誤発生場面:レセコン入力時
調剤過誤のほとんどはレセコン入力場面で起きているので
詳細はまた別の機会にまとめます。
事務さんの役割は非常に大事です!!
- 単純レセコン入力ミス
- 変更不可処方箋の変更調剤
- 許されない剤型変更
- 力価入力間違え
- その他 間違いの種類は多岐にわたる・・・
入力ミスに気付くためには、間違っている前提でチェックする必要があります。
ミスに気付いてうれしそうな薬剤師がいたら気のせいです。
事務さんを責めてるわけではなく、ミスを未然に防いだ達成感から喜んでいるので、イラッとしないでください(笑)
調剤過誤発生場面:処方監査時
- レセコン入力ミスの見落とし
- 先確認で得た情報と突合して処方監査するが、知識不足による
チェック漏れ - 副作用歴、併用薬剤の知識不足によるチェック漏れ
- 適応外処方、適応外用法などの知識不足によるチェック漏れ
- 薬歴のチェック漏れ
ここにおいては、分からないことを恥ずかしいとせず、他のスタッフに聞ける雰囲気を作ることが大切
他に薬剤師がいなければ、速やかに検索できるようGoogle検索画面を立ち上げておく
調剤過誤発生場面:ピッキング
似たパッケージや似た名称の誤り
特に同種同効薬(ミグリトールとボグリボースとか、イメージが似た薬)
同じ色の漢方(大建中湯と猪苓湯など)
こちらもチェック
- 先発医薬品→後発医薬品へ変更して入力したにもかかわらず
先発医薬品をピッキングする - 100錠以上のピッキングの際、別の箱を開封してしまうが、ピロー包装のため
中身が見えず間違えに気づかない
(ボグリボース126錠のつもりが
ミグリトール100錠とボグリボース26錠になってしまう) - ヒートの錠数の数え間違え
6錠シート、14錠シート、21錠シートなど - 同じ薬でも薬局によって、
7日分バンドル包装だったり10日分バンドル包装だったりする
処方箋と、入力データシートを見ながらピッキングしましょう
箱を開けるときは、名称をしっかり確認して開けましょう
(特にボグリボースやマグミットなどたくさん出るものは注意)
調剤過誤発生場面:調整時
- 賦形剤の選択ミス(乳糖とトウモロコシデンプン、常水と単シロ など)
- ピッキング同様、散剤の2袋目開封時に違うものを開封して混和
- 分包機の設定ミス(分2と分3を間違い、14包を21包で分包してまう)
- 分包機の印字設定ミス
- 一包化の際、隣のマスに錠剤が混入など一包化のミス
- 軟膏・散剤などの異物混入
あとの監査の人が気づいてくれるという甘えは厳禁
そのような姿勢が見えたら「そのまま投薬行ってもらっていい? 大丈夫?」とけん制します(笑)
調剤過誤発生場面:袋詰め・ラベル作成時
- ラベルに、1日3回の所、1日2回と書いてしまうなど記入ミス
(結果的に1回あたり容量オーバーしてしまう) - 同一患者の、用法が違う薬袋に入れて、服薬ミスが発生する
(1日1回のものを3回飲んで、足りなくなって気づく・・・)
ああ、おそろしいですね。
調剤過誤発生場面:最終監査
- 薬情の、不適切なコメントの修正漏れ(処方意図と違う用法の削除)
(あとで、自分の病気と違う薬が出ていると不安にさせる) - 取り揃えた医薬品で、冷所保存品や、重いもの(エンシュア)の入れ忘れ
- ここまでの不備を発見できず
調剤過誤発生場面:交付時
- 服薬方法の説明間違え(チュアブルを水で飲む とか)
- 服薬方法の説明忘れ(クラバモックスは水に溶かして服用せず、そのまま飲んでむせたとか など)
- 似た名前の別人に交付してしまう(飲んでしまってから気づいたら目も当てられない)
想像しただけで恐ろしい・・・
これらは知識不足からくる投薬ミスの可能性があります。
「薬を出すだけだからカンタン 新人に練習させよう」
ということの無いようにしなくてはなりません。
ボクは新人時代に浅い経験で投薬させられましたが、そんなことは絶対にあってはならない(笑)
なので、未熟な人に投薬は絶対にさせてません。
最後に
いかがでしたでしょうか
もしかしたら、これ以外にも発生ポイントはあるかもしれません。
発生ポイントを明確にして、現状の体制で過誤の発生がありうると判断されるなら、棚の配置や手手順の見直しなどの対策が早急に必要です。
知っててやらないのは、管理薬剤師の怠慢です。
また、重要なことは、
過誤が発生していない状態でも後から振り返って、この中の項目でチェックが漏れていたというものがあれば、【たまたま過誤にならなかったんだ】という厳しめの基準で考えることが重要です。
場合によっては、あとで気づいたチェック漏れも、ヒヤリ・ハットとして薬局内で共有しても効果的かもしれません。
確認を怠ったが、結果的にミスにつながらなかっただけです。
そして、不幸な要因が重なってしまい過誤が発生しないためにも、日々、適正に業務が行われているかチェックを怠らないことが管理薬剤師にとっては必要な業務だと言えます。