こんにちは。薬剤師&ケアマネ卵&ブロガーのゆるやく
です。
はじめに:漫然(まんぜん)処方とは
個別指導を意識していないと、あまり気にならない?
漫然処方について
添付文書で
本剤投与で効果が認められない場合、月余にわたって漫然と使用すべきでない。
という記述がある医薬品。
これらが、薬局の個別指導では狙われます。
ちゃんと確認しておかないと、もし突然個別指導に呼ばれた時に困ることになります。
言っちゃ悪いが、毒にも薬にもならないようなものが、漫然とダラダラ処方されているケースがあります。
効果のない薬の漫然投与は副作用や、医療費無駄遣いの元なので、ぜひとも削減していきたいところです。
そのために、薬局としても患者さんに聞き取りをします。
効果に疑問を感じたら処方医に確認して削除を依頼することもあります。
これが本来の薬局の義務なので、その義務をちゃんと果たしているかどうか個別指導でチェックするというわけです。
そんな、漫然処方
どうやって対策をしていけばいいか?
対策には日々の薬歴業務が重要になりますので、管理薬剤師だけでなく、勤務薬剤師の方も知っておくべき内容です。
ではいきましょう!
なお、こちらはいち薬剤師の見解であり、正式なものではありませんので
不明点などは薬剤師会に問い合わせる等していただき、確実性を担保して
いただきたいと思います。
また、あくまでも個別指導対策に特化した内容ですので、
もっと良い薬歴や、処方解析などにはあまり言及していません。
所々、疑義照会を回避するためにといったニュアンスがみられますが、
あくまでも無駄な疑義照会排除とう考えです。
必要な疑義照会まで省略を促しているわけではありませんので誤解の無いようお願いします。
また、この記事が原因で発生したいかなる事象にも一切責任は負いかねるとともに、不備などを発見した場合は、お知らせいただけるとありがたいです。
漫然処方は、効果を確認して薬歴に残す
漫然処方が疑われても、効果があって続けていることが示せれば、誰にも文句は言われません。
個別指導対策では、薬歴が全てです。
薬歴にて、効果が確認できているから継続してるとう根拠を示しましょう。
漫然投与注意医薬品について
医薬品の中には、「効果が確認されないのに漫然と続けないように」
と添付文書に書かれているものがあります。
漫然と続けても副作用リスクが高くないものでも、効果が無ければ薬剤料の無駄になります。
そのため個別指導では、漫然投与されやすい処方がある患者さんのレセプトが狙われることがあります。
以下は、その一例です。
PPI類
- オメプラゾール錠の8週以上の投与
- ネキシウムカプセルの8週以上の投与など
8週間以上継続して良いのは、再発・再燃を繰り返す
逆流性食道炎の維持療法のみです
8週間以上処方が続いてる場合はどうする?
模範解答としては、疑義照会で「難治性逆流性食道炎維持療法である」
と処方医から回答をもらうこととなります。
面倒?
面倒です。
でも大丈夫。
- 薬歴に、
「内視鏡検査の結果などから、逆流性食道炎という診断となり、
薬(PPI)が継続することになった」という事実を患者さんから聞き取る。 - 聞き取った内容を、SOAPの(S)情報に記録
- (A)で、難治性逆流性食道炎の維持療法のため、8週間以上継続は妥当
と、薬剤師の判断を記入 - 薬歴と表書きに、PPIは難治性逆流性食道炎の維持療法のため、8週を超えて継続
と記入
ここまでしておけば、疑義照会が無くても個別指導でしてきされることは
まずないです。
患者さんの聞き取りから、疑義が解消されていますから。
モサプリドクエン酸塩
一定期間(通常2週間)投与後、消化器症状の改善について評価し、投与継続の必要性について検討することとあります。
- 2週間服薬後、さらに2週間分処方されたとき
- 初回受付で、30日分処方を受けたとき
- 慢性疾患の1か月処方の中にモサプリドが組み込まれ処方が継続しているとき
これらに確認が必要となっています。
模範解答は、当然疑義照会です。
面倒? 患者さん待ってる?
個別指導を恐れて、マニュアル通りの疑義照会にならないよう注意!
①モサプリド2週間服薬後、さらに2週間分処方されたとき
- 「2週間モサプリドを服用したら調子も良くなって症状改善した」
という事実を患者さんから聞き取る - 聞き取った内容を、SOAPの(S)情報に記録
- SOAPの(A)にて、
「モサプリド2週間服用にて症状改善
効果良好につき継続妥当と判断。
以後継続可否について定期的にモニタリング必要」
と記載 - 表書きに、
【今後の継続的な薬学的管理及び指導の留意点】として、
モサプリドクエン酸塩:継続の場合は効果を定期的に確認
と残しておく
②初回受付で、モサプリド30日分処方を受けたとき
新患の場合で、お薬手帳に過去の服用歴があれば、
「過去服用で効果があったため、医師に相談して処方してもらった」
などの事実を聞き出し薬歴に記載
まったく服用歴がなくていきなり30日分処方が出ることは考えにくいですが、そのような場合で疑義照会できなかった場合の対応方法。
- 「2週間程度服用して、効果が無い場合は医師に相談するよう言われている」
という事実を聞き出す - そんな事実もなければ、2週間後効果が無い場合は、医師に相談するよう説明しその記録を薬歴に残すしかない
表書きに、【今後の継続的な薬学的管理及び指導の留意点】として、モサプリドクエン酸塩:継続の場合は効果を定期的に確認と残しておく
③慢性疾患の1か月処方の中にモサプリドが組み込まれ処方が継続しているとき
- 何か月かに1回
「継続して服用しているが、以前服薬を中断した際症状が悪化した
再開したら症状が改善した」という事実を聞き出す。
それもできなければ、「服用で効果が実感できてる」という事実を聞き出す。 - 聞き取った内容を、SOAPの(S)情報に記録
- SOAPの(A)にて、
「モサプリド継続服用にて症状改善
効果良好につき継続妥当と判断。
以後継続可否について定期的にモニタリング必要」
と記載 - 表書きに、
【今後の継続的な薬学的管理及び指導の留意点】として、
モサプリドクエン酸塩:継続の場合は効果を定期的に確認
と残しておく
加えて、〇月〇日 効果確認と、効果を確認した日を書き足していく。
ここまでを総括
漫然処方が疑われるとの対応方法
- 原則疑義照会
- 疑義照会できない場合は、患者さんから必要な情報を聞き出す
- 聞き出したことをもとに妥当性をアセスメントする
- その過程を、薬歴、表書きに残す
①~④の対応を念頭に置いて投薬に臨みましょう。
考えなしで投薬してしまうと必要な情報も聞き出せずに
薬歴記入時に困ることになります。
ここまでで一息
ここまで、たかだかPPIとモサプリドだけで長々と書いてしまいました。
新人薬剤師や、個別指導を経験していない薬剤師は、なんでこんな大したことなことで、長々語ってるんだろうって思うかもしれません。
確かに、相互作用や禁忌を見つけて副作用を未然に防ぐ薬剤師ってカッコいいですし、そっちの方が目立ちます。
一方、今回のように、無駄な薬剤費を節約するのも大事な仕事の1つです。
キビシイ保険財政の中で薬剤師が課された役割も重要です。
そういえば、こんなことがあったそうです。
個別指導で、漫然処方について薬歴に確認の形跡がなかったケース
指導官から次のように指摘されたそうです。
添付文書ちゃんと見てるの?
あなた本当に薬剤師?
管理薬剤師として適切でないと思うなら、開設者に自分から言えば?
聞いた話ではありますが、ハラスメントだ!と思う一方、ちゃんとやっている薬剤師と、いいかげんな薬剤師は一緒にしたくないという指導官の意思の表れではないか?
対患者さん、対個別指導
2つの対人においてしっかりと業務に挑みたいものです。
このほか、個別指導で漫然投与が指摘される医薬品
投薬時に症状聞き取りだけで疑義照会省略できるもの
- トラムセット配合錠
4週間以上投与し、効果が無い場合は中止 - ノイロトロピン
4週間以上投与し、効果が無い場合は中止 - リマチル
6か月以上投与し効果が無い場合は中止 - ビタメジン配合カプセル・メチコバールの長期継続投与
効果が無い場合、月余にわたって漫然と使用するべきではない - 脳循環・代謝改善薬(セロクラール・サアミオン)
12週間以上投与し、効果が無い場合は中止
これらの医薬品は、投薬時に効果を確認しておく必要があります。
- 服用時に症状が改善するが、次の服用直前には症状が悪化している
- 飲み忘れたら症状が悪化したが、飲み始めたら改善した
- 一度処方中止になったことがあるあ、中止で悪化、再開で改善した
これらの効果は患者聞き取りにより確認できる。
そこで効果を確認したこととし、薬歴、表書きにも記載しておくとよい
症状のほかに聞き取りが必要となるもの
もう少しありますので、お付き合いください・・・
ペルサンチンの、尿蛋白減少を目的とする場合の処方
4週間を目標として投薬し、尿蛋白量の測定を行い、以後の投薬継続の可否を検討する。
尿蛋白量の減少が認められない場合は、投薬を中止するなど適切な処置をとること。
尿蛋白量の減少が認められ投薬継続が必要な場合は、以後定期的に尿蛋白量を測定しながら投薬すること。(ペルサンチン添付文書)
- 尿検査等、検査値の紙もしくは糖尿病手帳などで記録があればコピー
- 尿たんぱく、もしくは尿検査の結果、医師から問題ないと説明された
- 一度処方中止になったことがあるが、中止で悪化、再開で改善した
これらのどれかが確認できれば、継続投与の妥当性も判断ができます。
ペルサンチン長期継続処方の患者さんがいたら、数か月に1回程度聞き取りして薬歴、表書きに残しておきましょう。
糖尿病用剤
ほとんどの糖尿病用剤が、2~3か月以上投与して、効果が不十分な場合は他の治療を検討
となっています。
- 血液検査の紙もしくは糖尿病手帳などで記録があればコピー
- 血液検査の結果、HbA1cは医師から問題ないと説明された
- 検査値が悪い場合でも薬を変更しない具体的理由を医師から聞いている
(高所作業がありインスリンは避けたい、運動療法を強化するよう指示が出た、など)
- 検査値が良ければ継続の妥当性が判断できるので問題はない
- 検査値が良くない場合も、その治療薬を継続せざるを得ない具体的理由
を確認できればよい。 - 糖尿病は特に、すべての作用機序の薬を組み合わせてやっとコントロール
という人が特に多い。
投与期間を超えて投与
これはもはや当たり前の項目です
レンドルミン、ハルシオンなどの向精神薬は30日の処方制限があります。
- レンドルミン錠 2錠、就寝前 30日分
2錠投与は、麻酔前投与のみ認められています。
いわゆる倍量処方で60日分です。 - レンドルミン錠 頓服 35回分
頓服35回分は35日分と判断されます
この人は1日に2回寝ますとか、通用しません(笑)
このパターンは原則疑義照会です。
(原則ということで、疑義照会がなくてもなんとかなったというケースも
聞いたことがあるので、それはまたいつか書こうと思います)
重複投与
マイスリー錠30日分と、ハルシオン30日分の同時処方
そのままでは、交互に服用して60日分にすることを狙った倍量処方的な疑いがかけられてしまいます。
本当に眠れない人は、やむを得ず重複して服用してることを疑義照会したのち薬歴にしっかり残す必要があります。
個別指導直前ではできることが限られます
いかがでしたでしょうか。
これらは、個別指導直前になって対策してもできるものではありません。
常日頃から、処方監査時、投薬時に意識して行動していなければしっかりとした
薬歴が書けません。
しかし、意識さえすれば、書くことは限られるので薬歴にかかる時間は大して変わりません。
そのあたりが、デキる薬剤師とそうでない人の違いになっていきます。エラそうに言っていますが、私もまだまだ修行中です。
ぜひとも、個別指導では、
【おおむね妥当】、【経過観察】を勝ち取って一発でクリアーしていきましょう!
長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。